ご自宅でのケアもメインテナンスの一部です
目次
毎日のセルフケアが、お口の健康を支えています
歯周病やむし歯は、毎日の生活の中で少しずつ進行する病気です。
そのため、お口の健康を守るうえで大切なのは、歯科医院で過ごす時間だけではありません。ご自宅で行う毎日のセルフケアが、その土台になります。
定期的なメインテナンス・SPTは、毎日の積み重ねを確認し、必要に応じてケアの方法を見直すための時間です。
メインテナンス・SPTで確認している内容については、「メインテナンス・SPTでは何を確認しているの?」の記事でも詳しくご紹介しています。
セルフケアの目的は「食べかすを取ること」だけではありません
歯みがきというと、食べかすや目に見える汚れを取ることを思い浮かべる方も多いと思います。
しかし、セルフケアで特に取り除きたいのは、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)です。
プラークは、細菌やその代謝産物などが集まったもので、歯周病やむし歯の原因になります。付着したまま時間が経つと、細菌の構成や性質が変化し、より問題を起こしやすい状態になっていきます。
お口の病気や口臭などに影響するのは、このように毎日新しく付着するプラークを、取り除かずにため込んでしまうことです。
そのため、セルフケアの中心は、プラークを繰り返し取り除き、ためにくい状態を保つことにあります。
「長く磨くこと」だけでなく、毎日続けること
一度に長い時間をかけて磨き、隅々まで汚れを取り除くことは大切です。
一方で、プラークは毎日付着するため、こまめに取り除くことにも意味があります。
そのため当院では、1日2回以上のブラッシングを目安にし、そのうち1回は時間をかけて丁寧に磨くことをおすすめしています。
ただ、忙しい日や体調のすぐれない日もあると思います。そのような日は完璧を目指すよりも、できる範囲で続けることが大切です。
特に就寝中は唾液の量が減り、お口の中の細菌が増えやすくなるため、夜のセルフケアはできるだけ欠かさず行っていただきたいと考えています。
歯ブラシだけでは届きにくい場所があります
歯の表面の多くは歯ブラシで磨けますが、歯と歯の間には毛先が十分に届きにくいことがあります。
そのため、お口の状態に応じて、
- デンタルフロス
- 歯間ブラシ
- ワンタフトブラシ
などを組み合わせることが必要です。
歯と歯の隙間が狭い部分にはフロス、隙間が広い部分や歯ぐきが下がっている部分には歯間ブラシが適している場合があります。
奥歯の後ろ側、歯並びが重なっている部分、被せ物の周囲などには、毛束の小さなワンタフトブラシが役立つこともあります。
すべての道具を使えばよいわけではありません。大切なのは、ご自身のお口に合った道具を、無理なく続けられる方法で使うことです。
力を入れすぎても、よく磨けるとは限りません
「しっかり磨こう」と考えるほど、歯ブラシを強く押し当ててしまうことがあります。
しかし、力が強すぎると毛先が開き、歯と歯ぐきの境目や細かな部分に届きにくくなります。また、歯ぐきを傷つけたり、歯の表面をすり減らしたりする原因になることもあります。
歯ブラシは、毛先を磨きたい場所に当て、細かく動かすことが基本です。
適した力加減や動かし方、歯ブラシの硬さは、お口の状態によって異なります。
「自分のお口を知ること」もセルフケアです
セルフケアというと、上手に磨くことに意識が向きがちです。
しかし、毎日お口に触れる中で、変化に気付くことも大切なセルフケアの一部です。
例えば、
- いつも同じ場所から出血する
- 食べ物が詰まりやすくなった
- フロスが引っかかる、切れる
- 歯間ブラシの通り方が変わった
- しみる場所が増えた
- 歯が浮くように感じる
- 噛んだときに違和感がある
- 被せ物や詰め物の周囲が気になる
- 歯ぐきの形や色が変わった
こうした小さな変化は、毎日お口を見ているご本人だからこそ気付けることがあります。
気付いたことが、より良いメインテナンス・SPTにつながります
歯科医院では、歯周組織検査やレントゲン、口腔内写真などを通して、お口の状態を客観的に確認します。
一方で、診療室で確認できるのは、その日の限られた時間だけです。
「数日前からここだけ出血する」
「最近、この場所に食べ物が詰まるようになった」
「以前よりフロスが通りにくい」
「このところ忙しくて、十分にケアできていない」
こうした情報は、現在の状態や原因を考えるうえで大切な手掛かりになります。
ご自身で感じた変化や、最近の生活の状況を伝えていただくことで、確認する場所や内容を絞り込みやすくなり、より的確なメインテナンス・SPTにつながります。
セルフケアは、メインテナンス・SPTをより有効にします
毎日のセルフケアが安定していると、メインテナンス・SPTの時間を、付着した汚れを取り除くことだけに使わずに済みます。
その分、
- 気になる症状や変化についての問診
- むし歯や歯周病に関わる変化の確認
- 被せ物やかみ合わせの確認
- ケア方法の微調整
- 過去の状態との比較
- 今後注意したい場所や変化の共有
といった、より踏み込んだ確認に時間を使うことができます。
また、ご本人が気になる場所を具体的に伝えられると、確認すべき点が明確になり、限られた診療時間をより有効に使えます。
セルフケアによって病状が安定し、小さな変化の段階で対応できれば、治療の負担を抑えられる場合もあります。
つまり、セルフケアはお口を守るだけでなく、歯科医院で受けるメインテナンス・SPTを、より有効な時間にすることにもつながります。
毎日お口を見ているのは、患者さまご自身です
歯科医院でお口を確認できる機会は、来院時に限られます。
一方で、毎日お口を見て、歯ブラシやフロスを通し、小さな変化に気付けるのは患者さまご自身です。
だからこそ、患者さま自身がお口の大切な観察者になることが、長く健康を守るための大きな力になります。
「少し出血しやすくなった」
「最近ここに物が詰まりやすい」
「以前と何か違う気がする」
そんな小さな気付きが、早い段階で問題を見つけるきっかけになることがあります。
毎日のセルフケアと、歯科医院でのメインテナンス・SPT。
この二つがつながることで、限られたメインテナンス・SPTの時間を、より丁寧な確認とケアに生かすことができます。
歯ブラシや歯間ブラシの選び方、磨きにくい場所、毎日のケアの中で気になっていることがあれば、ぜひメインテナンス・SPTの際にお聞かせください。
ご自宅での気付きと、歯科医院での確認をつなげながら、今のお口に合ったケアを一緒に整えていきましょう。
メインテナンス・SPTの内容や受診間隔については、「メインテナンスについて」のページでも詳しくご案内しています。

この記事の執筆・監修
ひしかわ歯科 院長 菱川敏光
日本歯科専門医機構認定 歯周病専門医
