知覚過敏への対応
目次
冷たいものがしみる、歯ブラシが触れるとピリッとする、風が当たるとしみる。 こうした症状があると、「知覚過敏だろうか」「むし歯ではないか」「早く治療したほうがよいのでは」と不安になるものです。
当院では、まず原因を確認したうえで、段階的に対応することを基本にしています。
まず、本当に知覚過敏なのかを確認します
「しみる」という症状だけで、知覚過敏と決めつけることはできません。似た症状を起こすものとしては、
- むし歯
- 歯のひびや破折
- 詰め物・被せ物の不具合
- 歯髄の炎症
- 治療後の一時的な症状
- 歯の摩耗・酸蝕
- NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)
- 歯肉退縮(歯ぐき下がり)
- 根面う蝕
などが挙げられます。そのため、どの歯が、どのような刺激で、どの程度しみるのかを確認し、ほかの病気による痛みではないかを見分けることが大切です。
知覚過敏とは、露出した象牙質に冷たいものや風、歯ブラシなどの刺激が加わることで起こる、一過性の鋭い痛みを指します。ほかの原因による症状であれば、それぞれに応じた治療を行いますが、知覚過敏が疑われる場合には、以下のように段階的に対応していきます。
A. 歯根の露出やNCCLが関係している場合
歯の根元に、むし歯ではない歯質の欠損が生じることがあります。これを**NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)**と呼びます。また、歯ぐきが下がって歯根が露出し、その部分に知覚過敏が起こることもあります。
歯の根元の状態には、歯ブラシによる摩耗、酸による影響、歯に加わる力など、複数の要因が関わっていることが少なくありません。そのため、欠損の大きさ・症状・進行性・清掃性・歯に加わる力・歯肉退縮の進行具合などを確認したうえで、必要な対応を考えます。
① まずは知覚過敏用の歯磨剤から
典型的な知覚過敏で、歯に大きな異常が見つからない場合は、まず知覚過敏を抑える成分を含む歯磨剤を使っていただくことがあります。刺激が神経に伝わりにくくしたり、象牙細管を封鎖して刺激を伝わりにくくしたりする成分が配合されており、すぐに効果が出るとは限らず、継続して使うことで徐々に楽になることもあります。
知覚過敏は、必ずしもその日のうちに症状をゼロにしなければならない病気ではありません。歯そのものに大きな問題がないと確認できていれば、少しずつ症状が落ち着いていく経過を見ることも、治療の一つです。
② 必要に応じて知覚過敏抑制剤を使用
歯磨剤だけでは十分に改善しない場合には、歯科医院で知覚過敏抑制剤を使用することがあります。象牙細管を封鎖するもの、歯の表面を被覆するものなど作用の仕方が異なるいくつかの種類があり、当院でも複数の材料を用意しています。
- 歯の表面の状態
- 症状の程度
- 象牙質の露出の状態
- その後に修復処置を行う可能性
こうした点を考慮しながら、その場面に適した材料を選択します。一度の処置で十分な場合もあれば、材料を変えたり、何度か処置しながら経過を見たりすることもあります。
③ 改善しない場合は、物理的に表面を覆います
歯磨剤や知覚過敏抑制剤でも改善せず、露出した歯根やNCCLが症状に関係していると考えられる場合には、CR(コンポジットレジン)で表面を覆い、症状の改善を図ることがあります。
また、歯根が露出している部分には根面う蝕が生じることもあります。根面う蝕は広い意味ではむし歯ですが、必ずしもすぐに削って詰めるわけではなく、病変の状態を確認したうえで、削らずに管理する選択肢も含めて対応を検討します。 →[根面う蝕への考え方と対応について]
B. 酸蝕が関係している場合
酸性の飲食物や胃酸などの影響で歯の表面が少しずつ失われる「酸蝕」でも、知覚過敏が起こることがあります。この場合、しみる部分だけに処置を繰り返しても、原因が続いていれば改善しにくいままです。
そのため①・②の対応と並行して、
- 酸性の飲料・食品の摂り方
- 食生活・生活習慣
- 胃酸の影響や逆流性食道炎の有無
なども確認します。知覚過敏を抑える処置だけでなく、なぜ象牙質が刺激を受けやすい状態になっているのかを見極めることが大切です。
C. 歯に加わる「力」が関係している場合
なかなか知覚過敏が改善しない場合には、歯に加わる力についても確認します。
- 特定の歯に強い接触がないか
- 歯ぎしりや食いしばりがないか
- 日中に上下の歯を接触させる癖がないか
- 歯の摩耗やNCCLが進行していないか
歯の根元に生じる欠損は一つの原因だけで説明できるものではなく、摩耗・酸・歯に加わる力など複数の要因が重なっていることがあります。力の関与が疑われる場合には、生活習慣を確認したり、必要に応じてマウスピースを使用したりすることもあります。
強くしみても、段階的に対応することがあります
「かなりしみるので、何かすぐに治療してほしい」そう思われるのは自然なことです。ただ、症状の強さと、歯に必要な治療の大きさは必ずしも一致しません。かなり強くしみていても、診査の結果大きな異常がなく、知覚過敏として徐々に改善していくケースもあります。
そのため、
知覚過敏用歯磨剤 → 知覚過敏抑制剤 → 原因の再確認 → 必要であればCRなどの処置
というように、状態を確認しながら段階的に対応します。改善までに少し日数がかかることもありますが、これは何もせず放置しているわけではなく、できるだけ歯を傷つけずに症状を改善するために、反応を確認しながら進めているということです。
早めの対応が必要な事情があれば教えてください
一方で、
- 仕事の都合で何度も通院できない
- 近いうちに長期間来院できなくなる
- 日常生活への支障がかなり大きい
など、できるだけ早く症状を抑えたい事情がある方もいらっしゃいます。その場合には、治療によるメリットと歯への侵襲のバランスを考えながら対応方法を検討します。通院できる回数や生活上の事情も含めて考えますので、特別な事情がある場合には遠慮なくお伝えください。
知覚過敏は、原因を確認し、必要な治療だけを行う。 当院では、この考え方を基本にしています。
知覚過敏が起こる仕組みについては、こちらの記事もご覧ください。
→[知覚過敏はなぜ起こるの?|歯がしみる仕組みと、原因が一つではない理由]
