むし歯の症状について
目次
冷たい・熱い・噛むと痛い――症状だけでは、むし歯とは限りません
「冷たいものがしみる」
「甘いものを食べると痛い」
「噛むと痛い」
「何もしなくてもズキズキする」
こうした症状があると、むし歯ではないかと心配になることがあります。
実際に、むし歯でこのような症状が出ることはあります。
ただし、症状の出方だけで、むし歯と判断できるとは限りません。
特に、むし歯、知覚過敏、歯のひびや破折は、似たような症状を出すことがあります。
そして、この違いを最初の診察だけで完全に判断することが難しい場合もあります。
慌てて治療しないことも大切です
症状があると、「早く削って治してほしい」と思われるかもしれません。
もちろん、原因が明らかなむし歯であれば、必要な治療を行うことで症状の改善が期待できます。
一方で、原因がむし歯ではなく、知覚過敏や歯のひびだった場合には、むし歯治療として歯を削っても原因が解決しないことがあります。
その場合、しばらくして症状が残ったり再び出たりしたときに、削った歯質だけは元に戻りません。
神経を取る治療についても同じです。
必要な場合には有効な治療ですが、診断が違っていれば、原因が残ったまま歯にだけ大きな処置を加えることになります。
それは、歯にとってとてももったいないことです。
そのため当院では、症状が強くても、緊急性がなければ一度で結論を出さず、
- 症状の出方
- 冷たいものや熱いものへの反応
- 噛んだときの反応
- 歯を軽くたたいたときの反応
- X線写真
- 詰め物や被せ物の状態
- 歯にひびがないか
- 歯ぐきや歯周組織の状態
- 時間の経過による症状の変化
などを確認しながら判断することがあります。
早く治療することと、早く削ることは同じではありません。
原因をできるだけ正確に見極めてから、必要な処置を行うことが大切です。
冷たいものがしみる
冷たい水や飲み物、アイスなどで歯がしみる場合、むし歯の可能性があります。
一方で、知覚過敏でも非常によくみられる症状です。
たとえば、
- 歯ぐきが下がって歯の根が露出している
- 歯の根元がすり減っている
- 歯に細かなひびが入っている
- 治療後で一時的に歯が敏感になっている
といった場合にも、同じようにしみることがあります。
刺激がなくなるとすぐに痛みが消えるのか、しばらく残るのかなども診断の参考になります。
ただし、それだけで原因を確定できるわけではありません。
噛むと痛いときは、歯のひびにも注意します
噛んだときに痛みがあると、むし歯が深くなっている可能性もあります。
一方で、歯のひびや破折でも非常によく似た症状が出ます。
特に、
- 硬いものを噛んだときだけ痛い
- 噛み込んだとき、または力を抜いた瞬間に痛い
- 痛む場所がはっきりしない
- 日によって症状が変わる
といった場合には、歯のひびが関係していることがあります。
小さなひびはX線写真に写らないことも多く、その場ですぐに診断できない場合があります。
このようなときに、原因を確かめないまま大きく削ったり神経を取ったりすると、あとから破折が原因だったと分かることがあります。
そのため、必要に応じて経過をみながら診断することがあります。
熱いものがしみる・痛む
熱い飲み物や食べ物で痛みが出る場合には、歯の内部にある歯髄、いわゆる「神経」の炎症が強くなっていることがあります。
冷たいものだけでなく、熱いものでも痛みが出る場合には、むし歯が深く進んでいる可能性があります。
ただし、痛みの出方や続く時間だけで、すぐに神経を取るかどうかを決めるわけではありません。
X線写真や歯髄の反応、治療中に確認できる状態などを組み合わせて判断します。
甘いものを食べるとしみる
甘いものを食べたときに、特定の歯がしみたり痛んだりする場合にも、むし歯が隠れていることがあります。
特に、歯と歯の間や、以前の詰め物の周囲などは、自分では見つけにくい場所です。
症状が軽くてもむし歯が進んでいることがありますので、繰り返し同じ場所がしみる場合には確認をおすすめします。
何もしなくてもズキズキ痛む
何もしていなくても痛む、夜になると痛む、ズキズキして眠れない、といった症状がある場合には、歯髄の炎症が強くなっている可能性があります。
この段階では、根管治療が必要になることがあります。
一方で、歯の根の周囲や歯ぐきの炎症などでも似た痛みが出ることがあります。
痛みが強い場合には、原因を確認しながら必要な処置を行います。
歯が黒い・茶色い
歯に黒い点や茶色い部分があると、「むし歯だ」と思われるかもしれません。
実際にむし歯の場合もありますが、着色や、以前に進行して現在は安定しているむし歯であることもあります。
反対に、見た目ではほとんど変化がなくても、歯と歯の間などでむし歯が進んでいることがあります。
そのため、色だけで治療が必要かどうかを判断することはできません。
穴が開いている・歯が欠けた
歯に穴が見える場合や、突然一部が欠けた場合には、むし歯によって歯の内部が弱くなっていることがあります。
一方で、歯のひびや破折が原因で欠けることもあります。
表面上は小さく見えていても、中でむし歯が広がっている場合もありますので、見た目だけでは判断できません。
詰め物や被せ物の周りが気になる
以前治療した詰め物や被せ物の境目から、再びむし歯ができることがあります。
境目が黒く見える、物が詰まりやすい、フロスが引っかかる、しみる、といった症状がきっかけで見つかることがあります。
一方で、単なる着色や段差であることもあります。
詰め物や被せ物を外してやり直すこと自体が、さらに歯を削る治療になります。
そのため、「怪しいから一度外してみる」ではなく、本当にやり直す必要があるかを確認することが大切です。
歯の根元にむし歯ができることもあります
歯ぐきが下がって歯の根が露出すると、その部分に「根面う蝕」ができることがあります。
根面う蝕は、歯周病治療後や年齢とともに歯ぐきが下がった方にみられやすいむし歯です。
ただし、根面う蝕もすべて削って詰めるわけではありません。
進行しているか、表面が硬く安定しているか、清掃できる状態かなどを確認し、フッ化物の使用や清掃方法の改善を中心に管理することもあります。
むし歯治療では、診断そのものが大切です
むし歯は、治療方法そのものより前に、本当にむし歯が症状の原因なのかを確認することが重要です。
むし歯、知覚過敏、歯のひびや破折は、症状だけでは区別しにくいことがあります。
そのため、
症状がある → すぐ削る
ではなく、
症状がある → 原因を考える → 必要に応じて経過も確認する → 原因に合った治療をする
という順序を大切にしています。
必要な治療を遅らせる必要はありません。
しかし、歯を削ることや神経を取ることは元に戻せない処置です。
治療すべきときにはきちんと治療する。一方で、判断が難しいときには慌てて歯を削らない。
そのバランスが、歯を長く残すためには大切だと考えています。
