口内炎・できもの・粘膜の違和感があるとき
目次
お口の粘膜の確認について
「口内炎がなかなか治らない」
「口の中にできものがある」
「白いところや赤いところが気になる」
「舌や頬の粘膜がヒリヒリする」
お口の中には、歯や歯ぐきだけでなく、舌、頬、唇、口の底、上あごなど、さまざまな粘膜があります。
これらに生じる異常の多くは、一般的な口内炎や傷など、一時的なものです。
一方で、見た目が似ていても、経過観察でよいものから、薬による治療が必要なもの、専門的な検査が必要なものまであります。
そのため当院では、「口内炎だから」と最初から決めつけず、まずどのような変化が起きているのかを確認します。
まず、いつから・どこに・どのようにできたのかを確認します
粘膜の病気では、見た目だけでなく時間的な経過が重要です。
診察では、
- いつ頃からあるのか
- 痛みがあるのか
- 大きくなっているのか
- 一度治って、またできたのか
- 同じ場所を繰り返し噛んでいないか
- 歯や詰め物、被せ物、入れ歯などが当たっていないか
- 水疱ができてから潰瘍になったのか
- 白色や赤色などの色の変化があるか
- 表面だけでなく、触ったときに硬さがないか
などを確認します。
必要に応じて、服用している薬や全身疾患、過去に同じ症状がなかったかなども確認します。
よくみられる口内炎
一般に「口内炎」と呼ばれているものの代表が、アフタ性口内炎です。
丸い、あるいは楕円形の浅い潰瘍ができ、食べ物や歯ブラシが触れると痛むことがあります。
また、頬を噛んだり、尖った歯や詰め物、入れ歯などが当たったりして、傷から潰瘍ができることもあります。
原因となる刺激が明らかな場合には、その原因を取り除きながら経過を確認します。
多くの口内炎は時間とともに改善します。
ただし、なかなか治らない、徐々に大きくなる、硬さがある、繰り返し出血するなどの場合には、単純な口内炎ではない可能性も考える必要があります。
唇などにできる「粘液嚢胞」
唇、特に下唇に、ぷくっとした柔らかい膨らみができることがあります。
代表的なものが粘液嚢胞です。
唾液を出す小さな唾液腺が傷つき、唾液が周囲にたまることで生じます。
一度小さくなったり消えたように見えたりしても、また膨らむことがあります。
自然に消失するものもありますが、繰り返す場合や大きくなる場合には、必要に応じて口腔外科での処置を検討します。
白い模様や赤みが続く「口腔扁平苔癬」
頬の内側などに、白い線がレース状にみられたり、その周囲が赤くなったりする病気に口腔扁平苔癬があります。
左右の頬にみられることが多く、症状がほとんどない場合もあれば、びらんや潰瘍ができて、食事の際にしみたり痛んだりすることもあります。
慢性的に経過することがあり、症状に応じて薬物療法などが行われます。
また、似た見た目を示す別の病気もあるため、必要に応じて専門医療機関での診断や病理組織検査を検討します。
口腔扁平苔癬では、長期的な経過観察も大切です。
こすっても取れない白い部分「白板症」
口の中に白い部分があっても、すべてが同じ病気ではありません。
その中でも、こすっても取れず、ほかの病気として説明できない白色病変を白板症と呼びます。
白板症は口腔潜在的悪性疾患の一つで、将来的に悪性化する可能性があるため、単なる「白い粘膜」として放置しないことが大切です。
病変の場所、広がり、表面の状態、赤い部分を伴っていないかなどを確認し、必要に応じて口腔外科などへ紹介し、病理組織検査を含めた精査を行います。
水疱や強い痛みを伴う「ヘルペス」
単純ヘルペスウイルスによって、唇や口の中に水疱や潰瘍が生じることがあります。
いわゆる口唇ヘルペスでは、ピリピリ、チクチクするような違和感から始まり、その後に小さな水疱ができることがあります。
口の中に症状が出る場合には、通常の口内炎との区別が難しいこともあります。
病変の出方や発症までの経過などを確認し、必要に応じて抗ウイルス薬による治療や医科への受診を検討します。
顔や口の中に強い痛みが出る「帯状疱疹」
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで起こります。
顔面に発症すると、皮膚だけでなく口の中にも水疱や潰瘍が生じることがあります。
特徴の一つは、神経の走行に沿って片側に症状が現れやすいことです。
発疹より先に、歯や歯ぐきの痛みのような症状を感じることもあり、歯の痛みとの区別が難しい場合があります。
帯状疱疹では抗ウイルス薬による早期治療が重要です。
顔面、眼の周囲、耳の周囲などに症状を伴う場合には、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科などでの診療が必要になることもあるため、症状に応じて速やかに医科へ紹介します。
「治らない口内炎」の中には悪性腫瘍が隠れていることがあります
口腔がんを含む悪性腫瘍は、初期には「口内炎ができた」「少し粘膜が荒れている」と感じる程度のことがあります。
注意したいのは、
- 潰瘍がなかなか治らない
- 徐々に大きくなっている
- 触ると硬い部分がある
- 出血しやすい
- 白色や赤色の変化が続いている
- 舌や粘膜の動きに違和感がある
- 飲み込みにくさなどが出てきた
- 首にしこりがある
といった変化です。
日本口腔外科学会でも、治りにくい口内炎、白色・赤色の変化、盛り上がりや硬さなどは、口腔がんのセルフチェックで確認すべき項目として挙げられています。
もちろん、こうした症状があるからといって、すぐに悪性腫瘍というわけではありません。
しかし、「口内炎だろう」と長期間様子を見ることも適切ではありません。
疑わしい病変については、口腔外科などの専門医療機関へ紹介し、画像検査や病理組織検査など、必要な検査につなげます。
当院で診断を完結させない場合もあります
お口の粘膜には非常に多くの病気があり、見た目だけでは診断できないものもあります。
そのため当院では、
まず歯科医院で確認できる範囲を診察し、必要なものを適切な専門医療機関につなぐ
ことも大切な役割だと考えています。
一般的な口内炎や、歯・詰め物・入れ歯などによる刺激が原因と考えられる場合には、原因への対応を行いながら経過を確認します。
一方で、
診断がはっきりしないもの、治りにくいもの、白板症や扁平苔癬など専門的な評価が必要なもの、悪性腫瘍を否定する必要があるもの
については、口腔外科などへご紹介します。
また、ヘルペスや帯状疱疹など、症状によって医科での診療が適している場合には、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科などへの受診をおすすめします。
「これくらいで受診していいのかな」と迷う必要はありません
お口の中は自分では見えにくく、「ただの口内炎なのか、診てもらったほうがよいのか」を判断するのは簡単ではありません。
多くの場合は心配の少ない変化ですが、確認した結果、問題がなければそれでよいと考えています。
反対に、治療や専門的な検査が必要な病変であれば、早めに見つけて次の診療につなげることに意味があります。
「いつもの口内炎と違う」
「なかなか治らない」
「できものが消えない」
「白い・赤い部分が気になる」
「舌や粘膜に何となく違和感がある」
そのような場合も、一度ご相談ください。
参考にした主なガイドライン・関連学会
- 日本口腔腫瘍学会・日本口腔外科学会『口腔癌診療ガイドライン 2023年版』
- 日本口腔外科学会「口腔粘膜疾患」「口腔がんセルフチェック」
- 日本皮膚科学会『帯状疱疹診療ガイドライン2025』
※口腔粘膜疾患は種類が多く、症状だけで確定診断できない場合があります。実際の診療では、病変の経過や診察所見、必要に応じた病理組織検査などをもとに判断します。
